オペラ『遣唐使~阿倍仲麻呂~』を鑑賞してきました。

オペラ『遣唐使~阿倍仲麻呂~』を鑑賞してきました。

松下功先生作曲のオペラ『遣唐使~阿倍仲麻呂~』を見に東京藝術大学奏楽堂に行ってきました。

奈良・薬師寺玄奘三蔵院の「大唐西域壁画」(画・平山郁夫)前にて、2009年6月に第1幕と第2幕、2010年6月に第3幕と第4幕が奉納上演されたオペラの東京初演。

前・東京藝術大学 学長である日本画家・平山郁夫氏の一周忌追悼として行われた公演ということもあり、第4幕では奈良の初演同様、セットとして「大唐西域壁画」が大きく掲げられていました(それまでの1~3幕では、舞台中央から上方にかけて大きな紗幕(半透明の幕)を張り、映像を流したり、うっすらと人影を浮かび上がらせたりと、効果的な演出がされていました)。

客席には片岡鶴太郎氏や鳩山由紀夫夫妻など、著名人の姿も。

阿倍仲麻呂役に福島明也氏、李白役に井ノ上了吏氏、若き遣唐使役に吉田浩之氏が起用されていたほか、オーケストラピットには、人間国宝・山本邦山氏(尺八)や、藝大の名誉教授・教官・学生・卒業生により編成された「東京藝術大学特別管弦楽団」(1管編成)が入っているなど、顔ぶれも豪華です。指揮は作曲者である松下功先生自身が担当。どこをどう切り取っても松下先生の音楽だとわかる作りはさすがでした。

さてこの「遣唐使」。

重要な箇所で「鐘の音」と「般若心経」が何度か登場するのですが(なんと、実際に薬師寺の僧侶が担当)、今回の公演では「ジャーーン」と最後の幕が終わった瞬間にもこの鐘が鳴り、同時に、「大唐西域壁画」の中から、平山郁夫氏の生前の姿が大きく浮かび上がる、という演出がありました(しかもとても素敵な笑顔の写真!)。

そして、鐘が鳴った後、(オペラの演者として)舞台に立っていた僧侶たちが、くるっと振り返り、生前の平山郁夫氏写真に向かって「般若心経」を唱え始める、という…。

美術学部・音楽学部・映像研究科など、藝大の方々が一丸となって制作した舞台だなぁ、という印象は上演中から感じていましたが、この瞬間、「なるほど 『平山郁夫先生一周忌追悼』とはそういうことか!」と、オペラとの有機的な結びつきに感服しました。


……余談ですが、このオペラの奈良・薬師寺初演は両年とも6月10日。

時計メーカー「ロレックス」がスポンサーだったこともあるようですが、「時の記念日」に平安遷都1300年を祝い、遣唐使の時代に思いを馳せる、とは、素敵ですね。

私の誕生日も6月10日。

そうか、「時間芸術」である音楽にもっと真摯に向かわなくてはいけないのだなぁ、と改めてプログラムを見直し、そこに掲載されていた、師匠である松下先生のプロフィール写真を見ながら気を引き締めたのでした。